今の社会は、地球環境の劣化と物質的消費欲求の劣化という2つの限界を迎え、明確な行き詰まりを示しはじめました。一方で、これは従来の延長線上に求める豊かさは存在しないと言うことでも有ります。今、新たな定常化社会を具体的に描き、それに向かって全力で進むことが求められていますが、それは、人手が余り、資源が枯渇すると言う時代を迎えて、文明的社会から文化的社会への移行であり、具体的には、ローカル・非貨幣(お金以外の価値も評価される)・労働集約等がキーワードとなる社会でもあります。
この新定常化社会への移行は、すでに、ものより心の豊かさを求める人たちの増大、ものを欲しがらない若者の増加、自然やアウトドアあるいは家庭菜園のブーム等にその予兆が明確に見られ始めています。
沖永良部島では、新定常化社会の具体的なかたちを明らかにするため、過去6回のシンポジウムを通して、島の文化を創り上げて来た『5つのち・か・ら』を洗い出し、毎月開催されている酔庵塾で『5つのち・か・ら』を『孫が大人になったときにも光り輝く島』にするための18の具体的施策として両町にも提案し、一方では草の根活動として、現在12の部会を組織、社会実装を目指すと同時にその一部は『まち・ひと・しごと総合戦略』にも展開されています。
しかしながら、これらの提案を今後具体的に社会実装するためには、知識、スキル、知恵を含めまだまだ大きな壁があることも事実です。
本シンポジウムでは、すでに先駆的にローカル実践を開始している日本の多くの地域の方々にも集まって頂き、沖永良部島に必要な実装手法創出の視点や手法を学び、新たな一歩を踏み出す力を頂くとともに、集まって頂いた地域同士のネットワーク構築による協創的な地方横断型組織の創成も考えたいと思っています。
なお、本シンポジウムは、東北大学大学院環境科学研究科が国立研究開発法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター「持続可能な多世代共創社会のデザイン」研究開発領域に提案、採択された研究開発プロジェクト「未来の暮らし方を育む泉の創造」との共同開催です。
塾長である石田 秀輝さんは、1998年に伊奈製陶株式会社(現 株式会社LIXIL)に勤務していた頃、会社のリフレッシュ休暇で沖永良部島に訪れてから、毎年通い続け、2004年「風の家」というコンセプトで、知名町徳時字に小さな庵「酔庵」を建て、2014年3月末に東北大学を退職後、島に移住しました。
石田さんは、島の人たちに沖永良部島で「心豊かな暮らし方」をお互いに探しながら、そこで得た考え方を共有し、広めていくための活動を行うため「酔庵塾」を作りました。
ちなみに、酔庵は石田さん宅の屋号からとっています。
酔庵塾は2014年9月に第1回を開催してから、ほぼ毎月開催され約70名の島民、職種も農家・漁師・商売人・建設事業者・主婦・行政職員等の様々な人たちが参加しています。
塾は石田さんが「地球環境問題」や「暮らし方のかたち」のあり方などについて講和するとともに、時には島内外の人を講師にお願いして「心豊かに暮らすためには、どうすれば良いか」を塾生全員と学んでいます。
また、前回の平成27年第6回沖永良部シンポジウムからは酔庵塾が主体となり、沖永良部島が失くしてはならない5つの価値『食』『自然』『楽しみ・遊び』『集い』『仕事』について世代を超えた多様な人たちが、熱い議論を交わしまとめあげ、光り輝く20年後のライフスタイルについて発表を行いました。
今年は、20年後の光り輝くライフスタイル実現の為、12の部会を立ち上げ、まず3年後へ向け、「米作り部」では田植え、「島料理部」ではおしゃれな島料理レシピ本の発行、「教育部」では島に大学を誘致する等の具体的な取り組みを行っています。
最近、酔庵塾では子育て世代にも門戸を開くためキッズルーム「みらいのたまりばぁ~」を併設し、お子さん連れでの参加を歓迎しています。
これからも酔庵塾では、「光り輝く沖永良部島」であるための活動に励みます!
今後益々厳しくなるであろう地球環境制約や、少子高齢化などの社会的制約の中で、持続可能かつ心豊かな社会を実現するためには、経済成長や暮らしの利便性を追求する従来の考え方ではなく、制約を踏まえた新たなライフスタイルの創造と移行が求められます。
本プロジェクトでは、制約条件が異なる4地域をモデル地域として、地域に適した未来のライフスタイルを創出する基盤をそれぞれ構築します。具体的には、現在90歳前後の高齢者へヒアリングを行い、戦前の厳しい制約の中で豊かさを生み出す価値や地域らしさを抽出し、それらを基に、新しいライフスタイルをバックキャスト思考によりデザインします。また、描いた新しいライフスタイルを多世代共創により具現化し、浸透させるための方法論の構築を目指しています。